other
{{detailCtrl.mainImageIndex + 1}}/4

『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー

2,640円

送料についてはこちら

訳者:柳谷 あゆみ 連日自爆テロの続く都市。吹き飛んだ遺体の残骸から生み出された怪物は、 自分に死をもたらした者どもに復讐を誓い、混沌の夜を駆ける―― ブッカー国際賞最終候補、アーサー・C・クラーク賞最終候補、アラブ小説国際賞受賞など 数々の賞で話題となったイラクの怪作! ー 連日自爆テロの続く2005年のバグダード。古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。 しかし翌朝遺体は忽然と消え、代わりに奇怪な殺人事件が次々と起こるようになる。そして恐怖に慄くハーディーのもとへ、ある夜「彼」が現れた。自らの創造主を殺しに―― 不安と諦念、裏切りと奸計、喜びと哀しみ、すべてが混沌と化した街で、いったい何を正義と呼べるだろう? 国家と社会を痛烈に皮肉る、衝撃のエンタテインメント群像劇。 アフマド・サアダーウィー (Ahmed Saadawi) イラクの小説家、詩人、脚本家、ドキュメンタリー映画監督。2009年、39歳以下の優れたアラビア語の作家39人を選出する「ベイルート39」に選ばれる。 2014年に『バグダードのフランケンシュタイン』で、イラクの作家としてはじめてアラブ小説国際賞を受賞。 本書は30か国で版権が取得され、英語版がブッカー国際賞およびアーサー・C・クラーク賞の最終候補となった。現在バグダード在住。 ー 【書評】物語の渦の中に怪物が現れる  評者:沼野充義  2005年のバグダードを舞台とした小説。幻想的でグロテスクな要素をはらみながらも、現実の生活を描く細部は驚くほどリアルだ。歴史や宗教的背景に支えられているが、いまを生きる巷(ちまた)の人々の姿が生々しく浮かびあがる。著者は一九七三年、バグダード生まれの気鋭のアラビア語作家である。  自爆テロや対立する勢力間の戦闘があいついでいた時期のバグダードで、ある古物商が町にごろごろしている死体の様様な身体部位を拾い集め、それをつなぎ合わせて「きっかり一人前の遺体」を作り出す。そこに死者の魂が入り込み、遺体は新たな命を得て、古物商の手を離れて動きだす。フランケンシュタインの怪物の現代バグダード版というわけだ。複数の死体から構成されたこの「名無しさん」は、自分に死をもたらした者たちへの復讐を開始する。町のあちこちで奇怪な殺人事件が起こり、当局も占星術師の力を借りて捜査に乗り出す。  SFというよりは、現代アラブ社会のほら話と言ったほうがいいだろうか。実際、古物商は、カフェに腰を据え、話術で人々を楽しませる「ほら吹き男」であり、その話をあるジャーナリストが聞き、彼のICレコーダーには他ならぬ「名無しさん」の告白が吹き込まれ、さらにそれらの資料を託された「作家」が書こうとした小説などが絡み合って語りは錯綜し、何が本当なのか分からない物語の渦に読者を巻き込むのだ。ちなみに、よく誤解されることだが、メアリー・シェリーによる元祖フランケンシュタインは怪物を作り出した科学者の名前であって、怪物のことではない。本書の場合も、本当の主人公は死体から作られた怪物ではなく、むしろ、それを生み出した、現代の市井に生きる多種多様な、したたかで、いこじで、悲劇的であると同時に愉快な人々である。彼らの集合的な欲望と絶望と希望が、怪物を作り出したのだ。多種多様な人々の寄せ集めというこの奇妙な存在は、複雑な要素が絡み合ってできたイラクという国そのものの縮図でもあるのかもしれない。 (『青春と読書』2020年11月号より)

セール中のアイテム