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「ママ、ぼくたち“るろうのたみ”になるの?」
1937年、スターリン体制下のソ連。
朝鮮半島にルーツを持つ17万の人々が突然、行き先を告げられないまま貨物列車に乗せられ、極東の沿海州から中央アジアに強制移送された。
狭い貨車の中で語られる人々の声を物語に昇華させ、定着を切望しながら悲哀に満ちた時間を歩んできた「高麗人(コリョサラム)」の悲劇を繊細に描き出す。
《さすらう地。さすらう闇。さすらう人々。
この物語は、この世界を彷徨い生きるすべての者の物語なのだ。》——姜信子
「キム・スムはこれまでも、一貫して「可視化されなかった苦痛、語りえなかった苦痛」を詳細に記録することで、忘れられゆく記憶を甦らせてきた。1937年の史実に基づくこの作品は、貨車の中で各々が語る身の上話や会話によって、見知らぬ土地で生き抜いてきた高麗人の歴史を重層的に浮かび上がらせている。」——訳者
装幀:北田雄一郎
目次
第一部
第二部
第三部
註
日本語版解説 旅人は「問いの書」を手に…………姜信子
訳者あとがき
岡 裕美/訳
姜信子/解説
四六判上製 312頁
キム・スム(김숨/KIM Soom)
1974年、蔚山広域市生まれ。韓国現代文学を代表する作家の一人。1997年、作家デビュー。
『ひとり』(岡裕美訳、三一書房)や『Lの運動靴』(中野宣子訳、アストラハウス)、『さすらう地』(岡裕美訳、新泉社)など多くの作品を通じ、疎外された弱き人々、ルーツを失った人々を見つめ、人間の尊厳の歴史を文学という形で甦らせてきた。
李箱文学賞、現代文学賞、大山文学賞などの主要文学賞を受賞。
2020年発表の『さすらう地』で東仁文学賞、楽山金廷漢文学賞を受賞。