





「わたしたちがお別れするときも必ず餃子をつくるからね」
中国の北方では、人々は別れの時に、手作りの水餃子を囲んでその別れを惜しむという。
自身の研究分野を「民族音楽学」に決めた著者が選んだ調査地は中国の農村。1988年、文化大革命後に「改革開放」へと舵をきった中国で、右も左もわからぬまま「研究」への情熱と未知なる大地へのあこがれだけで、彼女のフィールド調査がはじまった。
中国の都市や農村での調査をきっかけにさまざまな出会いがあった。「怖いものはない」という皮肉屋の作家、強烈な個性で周囲の人々を魅了し野望を果たす劇団座長、黄土高原につかの間の悦楽をもたらす盲目の芸人たち……「親切な人」とか「ずる賢い人」といった一言では表現できない、あまりにも人間臭い人々がここにはいる。それぞれの物語で描かれている風土と生命力あふれる登場人物に心うごかされ、人の心のありようについて考えてみたくなる。
1988年以降の中国という大きな舞台を中心に駆け巡った数十年間には無数の出会いと別れがあった。そのなかから生まれた14の物語をつづったエッセイを、40以上のイラストとともにお届け。
イラスト:佐々木 優
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□著者紹介
井口 淳子(Junko IGUCHI)
専門は音楽学,民族音楽学。大阪音楽大学音楽学部教授。
大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得,文学博士。
主な研究テーマは中国の音楽・芸能,近代アジアの洋楽受容。
主な著書に『亡命者たちの上海楽壇―租界の音楽とバレエ』(2019年,音楽之友社),『中国北方農村の口承文化―語り物の書・テキスト・パフォーマンス』(1999年,風響社)など。
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□仕様
A5変型判並製(縦148mm×横195mm ×厚さ15mm)
総頁数: 224ページ
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□目次
はじめに
序 まだはじまっていないころのお話
Ⅰ 河北省編
第1章 老師的恋
第2章 北京の女人
第3章 ゆりかごの村
第4章 占いか、はたまた芸人か
Ⅱ 黄土高原編
第5章 雨乞いの夏
第6章 村の女たち、男たち
第7章 黄河治水局のおじさん
第8章 尿盆(ニァオペン)
第9章 人生も戯のごとく
Ⅲ 番外編
第10章 頑固じいさんと影絵芝居
第11章 かくも長き一八年
第12章 パリの台湾人
第13章 想家(シァンジァー)
第14章 人を信じよ!
あとがき
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