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◼️島口大樹『遠い指先が触れて』フェア
選書コメント
川の水を掬うと掬ったものと掬われずに流れていくものが生まれてしまうこと、そんな当たり前のことさえやるせなく感じ、断定することに戸惑いながらも置かれていく言葉はだからこそ弛み、その弛みは記憶や想念、感覚をこっそり引き出し、気づいた時には僕らもなにかを差し出している。小説や第二詩集も素晴らしいのだけれど、現代の作家を一から追える喜びを共に味わえたら。
(島口大樹)
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中原中也賞受賞の第一詩集、二二編。
読み込むほどにさまざまに色変わりする詩の空間、その奥行や弾力性が魅力だ。
――井坂洋子
すべての言葉に神経が行き届き、単純な選択に思える言葉の一つ一つに、明白には書かれない「背景」があるように思えた。
――高橋源一郎
想念にとどまらず、書かれていることが実際に根差していることから発する判断力を感じさせる点に、好感が持てた。
――蜂飼耳
[目次]
川をすくう手
ぼくのビーム
はだしになってもないの、根
INRI
受け入れるだけの、周りをどんどん吸い込む体
大人だ、もうどうしようもない
安らかな着地
ムービング
どの表面も、反射する膜
熱帯鳥類館、内部
立国
発生と変身
光る川はそのまま、それで、これは流していいんだっけ
テンダー
バイバイ、グッドモーニング
川、腰までつかるほどの
ここ、ウーメラの砂漠
ダフネ
大丈夫、中空で飛ぶ
母国
する、されるユートピア
ニューワールド
井戸川射子(いどがわ・いこ)
二〇一八年 第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行
二〇一九年 同詩集にて第二四回中原中也賞を受賞