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◼️滝口悠生『水平線』フェア
選書コメント
同じ時代に近い場所で小説を書いているひとのなかでも柴崎さんの存在は特別で、キャリアとしても世代としても自分のひとつ上、つまりいちばん近い先輩だと勝手に思っています。僕がデビューして間もない頃に柴崎さんが発表したのがこの作品でした。そのときはまだ漠然と、こんなふうに戦争のことを書けるんだな、と思ったのでしたが、キャリアを重ねるにつれ自分にとっても戦争のことが少しずつ書く対象として意識されてきて、そのたびに思い返し読み返しする作品です。
(滝口悠生)
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離婚して1年、夫と暮らしていたマンションから引っ越した36歳の砂羽。昼は契約社員として働く砂羽は、夜毎、戦争や紛争のドキュメンタリーを見続ける。凄惨な映像の中で、怯え、逃げ惑う人々。何故そこにいるのが、わたしではなくて彼らなのか。サラエヴォで、大阪、広島、東京で、わたしは誰かが生きた場所を生きている――。生の確かさと不可思議さを描き、世界の希望に到達する傑作。