わたしはフェミニストじゃないと思っている人へ─
目の前の状況に対応するために生み出された様々な対話や実践に満ちた一冊
本書は、金沢21世紀美術館での「ぎこちない会話への対応策ー第三波フェミニズムの視点で」展に関連して出版されました。
"本展覧会は、ゲストキュレーターのアーティスト・長島有里枝が、1990年代以降に活動を始めた10作家の作品について、フェミニズムの視点から新たな解釈可能性を見いだす試みです。
93年のデビュー以来、長島は、自身を含む同世代の女性写真家をくくった「女の子写真」というカテゴリーに疑問を持ちながら、作品制作と執筆活動を続けてきました。80年代のメディアが喧伝した揶揄的なフェミニスト像に違和感を持っていた若い長島は、「フェミニスト」と自称することを避けつつも、常に男性中心主義的な価値観への問題提起を作品にしてきました。当時の若者のフェミニズム的実践を見えにくくしたそのような態度は、日本における第三波フェミニズムの一つのあり方であったと考える長島は、「運動」や「連帯」の形を取ってこなかった作家たちの作品にもその要素が見いだせるのではないかといいます。このような考察に基づき、長島が9名の作家との対話を経て選んだ作品をご紹介いたします。
目の前の状況に対応するために生み出される様々な実践を、バリエーションに富む作品の中に見いだす機会となれば幸いです。"
(金沢21世紀美術館 展覧会概要より)
長島有里枝による序文「わたしはフェミニストじゃないと思っている人へ」から始まる本書には、展覧会に出展した10名の作家(長島有里枝/さとうりさ/木村友紀/潘逸舟/藤岡亜弥/ミヤギフトシ/ミヨ・スティーブンス - ガンダーラ/小林耕平/岩根愛/渡辺豪)に加え、ゲストとして参加した3名の作家のページが収載されています。
「フェミニズムの展覧会はどうやって生まれるのか、フェミニストとはどんな人たちか、『連帯』や『仲間』とはどういう関係性のことなのか。」(序文より)
すなわち、フェミニズムとは何だろうという問いかけと、それをめぐる対話や実践に満ちた一冊となっています。
作家がそれぞれのページを編者と話し合いながら構想し、展示作品について再構成したり追考したりテキストを執筆したりする。
キュレーターである長島との、SNSでのやりとりや対談が展開する。
一冊の中にzineが現れたり(カナイフユキ)、星占いが綴られたり(ふぇみにゃん)、大切な存在をイメージした花が活けられたりする(河村敏栄)。
そして、多く収載された展示風景やイベントの光景も、主に出展作家によって撮影されており、空間における相互の関係性が浮かび上がります。
長島による論考「<フェミニストで>あるかどうかは問題じゃない」、また池田あゆみによる論考「『ぎこちない会話への対応策』への一考察ーアシスタントキュレーターの視点から」は、第三波フェミニズムの視座を導入して作品を捉え直し、社会との関わりやせめぎ合いの中から生まれている各作品について詳述しています。フェミニズムの思想とこれからの私たちを考える上で、大きな意義をもつ言葉となるでしょう。
目次
009 わたしはフェミニストじゃないと思っている人へ
長島有里枝
012 長島有里枝
027 [対談] 木村友紀 × 長島有里枝
038 さとうりさ
048 木村友紀
058 潘逸舟
066 藤岡亜弥
080 ミヤギフトシ
090 ミヨ・スティーブンス - ガンダーラ
100 小林耕平
114 岩根愛
128 渡辺豪
141 ひとつひとつの星が、その光を認めあってつながる、
わたしたちの時代へ
ふぇみにゃん
149 (フェミニストで)あるかどうかは問題じゃない
長島有里枝
173 気持ち悪いウサギ、異星人、変な人
カナイフユキ
181「ぎこちない会話への対応策」への一考察
アシスタントキュレーターの視点から
池田あゆみ
187 作家略歴
206 作品リスト
210 謝辞
211 フォトクレジット
Editor :長島有里枝
池田あゆみ(金沢21世紀美術館)
姫野希美
Book Design:木村稔将
発行:赤々舎
Size: H257mm × W185mm
Page:212 pages
Binding:Softcover