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コロナ禍のベルリン。若き研究者のパトリックはカフェで、ツェランを愛読する謎めいた中国系の男性に出会う。
〝死のフーガ〟〝糸の太陽たち〟〝子午線〟……2人は想像力を駆使しながらツェランの詩の世界に接近していく。
世界文学の旗手とツェラン研究の第一人者による「注釈付き翻訳小説」。
「死のフーガ」で知られるユダヤ系のドイツ語詩人パウル・ツェラン(1920~1970)は、20世紀を代表するヨーロッパの詩人。両親はナチスによって命を落とし、ツェラン自身も労働収容所で生死の境をさまよいます。労働者として残るか、アウシュヴィッツへ送られるかの選別を受け続けたのです。
生誕100年に寄せて、多和田葉子さんがドイツ語で書き下ろしたこの小説には、詩集『糸の太陽たち』(1968)をはじめツェランの詩句がちりばめられています。ツェラン研究の第一人者・関口裕昭さんが詳細な訳注をほどこしました。
ツェランの詩集を愛する青年パトリックの心の旅がはじまります。
目次
1 歌うことのできる成長
2 天使の素材からなるテクスチュア
3 傷つきやすい指
4 生命の樹をともなう小脳の虫
5 衝突する時間たち
6 ミイラの跳躍
訳者によるエピローグ
訳注
訳者解説(パウル・ツェランについて/詩集『糸の太陽たち』について/多和田葉子とツェラン)
四六判 上製 上製カバー装 200ページ
文藝春秋