【編集長より】
『ことばと』vol.6をお届けします。
特集は「ことばと戦争」です。
とても大きな、そしてとても重いテーマであることは承知しています。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻のみならず、今もこの世では、数多くの「戦争」が起こっています。
そして「戦争」の予兆も、遠くに近くに、確かに幾つも存在しています。
「戦争文学」という言葉があります。歴史的な名作も沢山あります。けれども「戦争」のなんたるかが変質するとともに、この語の意味合いも変わってしまったと思います。
一見そうは見えない小説であっても、実は一種の「戦争文学」になっていることもあれば、直截的に戦争を題材にしていても、戦争を描いたことにはならない場合もある。
すごく複雑になってしまいました。
ことばとのようなささやかな文芸誌が「戦争」を特集するには、自ずと限界があります。それもじゅうぶんに承知しています。
限られた誌面のなかで、「戦争」について、何が出来るのだろうか?
考えながら作ったのが、今号の特集です。
ことばと編集長 佐々木敦
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最新6号の特集は「ことばと戦争」。
また、リニューアルとなった「第四回ことばと新人賞」の発表号です。
受賞作1作とと佳作1作を全文掲載しています。
ことばと編集長の佐々木敦さんに加えて江國香織さん、滝口悠生さん、豊﨑由美さん、山下澄人さんの総勢5名による白熱の選考会の様子も収録。
選考会で挙がった最終候補作はweb侃づめにて公開中です。
織戸久貴「アフターワード」
高本葵葉「ぬけがらホテル」
★★「ことばとvol.6」ラインナップ★★
【巻頭表現】
谷川俊太郎「人と人」
【第4回ことばと新人賞】
受賞作 福田節郎「銭湯」
佳作 井口可奈「かにくはなくては」
選考座談会(選考委員:江國香織、滝口悠生、豊﨑由美、山下澄人、佐々木敦)
【特集 ことばと戦争 】
◎インタビュー
高橋源一郎「戦時下のことば、最前線のことば」(聞き手:佐々木敦)
◎小説
北野勇作「戦争の夢」
高山羽根子「朝の喫茶店・内装」
早助よう子「風船爆弾をつくった祖母の話」
吉村萬壱「イチコロ」
◎評論
小峰ひずみ「人民武装論 RHYMESTERを中心に」
水上文「聴き取られない声を聴く――『戦争は女の顔をしていない』と日本」
【創作】
小山田浩子「あさみぎよひだり トミヱさん(二)」
仙田学「雪ちゃんなんてだいっきらい!」
【翻訳】
ロシア――戦争に反対する詩人たち 解説・訳 高柳聡子
戦争について黙っていてはいけない
タチヤーナ・ヴォリツカヤ 「ママ、ママ、戦争だ、戦争だよ!」
アーリャ・ハイトリナ 時の切断
エカテリーナ・ヒノフケル くち
アレクセイ・ボロネンコ ロシアの民族料理
ヤン・クントゥール 「ブチャ」(罪なく殺されたすべての人びとの記憶に)
エカテリーナ・ザジルコ 無題
【本がなければ生きていけない】
韻踏み夫「世界のなかに置かれた書物」
杉田協士「喫茶店」
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A5、並製、336ページ
編集長/佐々木敦
ロゴマーク/石黒正数
表紙・本文デザイン/戸塚泰雄
装画・挿絵/近藤恵介
書肆侃侃房