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原書: Folding the Red into the Black: Or, Developing a Viable Untopia for Human Survival in the 21st Century
「ぼくたち全員の人生をよりよいものにするには、どうしたらいいのだろう?」――仕事、税金、収入、住居をはじめとする政治・経済から暮らしまで、社会主義と資本主義のハイブリッドを提起する20章。
『ブルー・ドレスの女』(ハヤカワ文庫)など、多くのミステリーで知られるアメリカを代表する黒人作家が、新しい社会のありかたを提言。政治、経済、差別、所有、食べもの、税、労働時間、文化などについてわかりやすく語りながら、21世紀の生き抜きかたを考えます。
著者への最新インタビュー、酒井隆史さん(社会思想史)による2万字解説を附す。
目次
まえがき 実現できるかもしれないすばらしい世界がある
アントピア
0 〈アントピア〉──完璧ではないぼくたち人間のための場所
1 まずはじめに信じたい二つのこと
2 人間は誤りを冒す
3 いったい誰のための進歩なのだろう?
4 人間は交換可能な部品にすぎない
5 なぜみんなが億万長者になれないのか?
6 もっと欲しいのに手に入らない苦しみ
7 最優先すべきほんとうに必要なもの
8 言葉がなくなれば人間もいなくなる
9 世界は個人の前にひれ伏す
10 嵐が来る前に屋根を直しておく
11 だれがなにを所有しているのか?
12 人間にとってどうしても必要な8つのもの
13 人間から労働力を奪う機械への課税
14 基礎食品と眠る場所の心配をなくす
15 所得税率は一定にし、真に自由な市場を守る
16 自分のほんとうの姿を見失ってはならない
17 そのためには〝革命〟が必要だ
18 資本主義と社会主義に手綱をかける
19 労働時間を減らし、日常から飛び出そう
参考文献
著者インタビュー:自身の奥深くを見つめ直し、そこで見つけたものを共有していく
解説:同化を拒みつつ、別の世界を考える――ウォルター・モズリイについて(酒井隆史)
訳者あとがき
「理想を言えば、仕事はたのしいし、心地良い疲労を感じる程度に働けば、日々の生活を賄えるだけの収入が得られる。そのうえで、余暇には〝趣味〟に邁進することもできる、という状態にありたいものです。そうすれば仕事との向き合いかたにも余裕が生まれますし、ということは生活の全域にわたって無理が減りそうです。ささやかな理想というよりも、これこそがあたりまえの生活ではないでしょうか。
しかしそれがあたりまえではないからこそ、われわれは「パンのために」と頭を切り替えて日銭を稼ぎ、それゆえ仕事にやりがいを感じられない瞬間が増え、全体として汲々としながら生きていかなければならなくなるわけです。
いったい、どうしたら追いつめられることなくあたりまえの生活をしていけるのでしょう。そのためには、どういう社会を目指せばいいのでしょうか。そのありかたや、そこにいたるまでの道筋を具体的に考えるのが本書です」
――「訳者あとがき」より
ウォルター・モズリイ
1952年生まれ。アメリカ合衆国在住の小説家。
1990年、「イージー・ローリンズ」シリーズ第一作となる『ブルー・ドレスの女』でエドガー賞などを受賞、映画化される。以後、色をタイトルにした『赤い罠』『ホワイト・バタフライ』『ブラック・ベティ』『イエロードッグ・ブルース』(以上、いずれも坂本憲一訳、早川書房)をはじめ多数の小説を発表。
評論に『放たれた火炎のあとで』(藤永康政訳、ブルースインターアクションズ)などがある。
発行:共和国
四六変型判 縦188mm 横117mm 厚さ16mm 重さ 300g 272ページ 上製