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【国書刊行会 創業50周年記念復刊】
〈ちがうね、諸君、もう一度言うが、それはちがう。君たちは若いし、頬っぺたにも熟れた林檎みたいな赤みがさしている。ジーンズだって擦りきれ、声も明るく甲高い。だがね、ステパン・イリイチ・モロゾフが恋人のワレンチーナを愛したような愛し方はどのみち絶対にできっこないんだ・・・・・・〉
愛の物語を一切省き突然の狂気へと読者をひきずりこむ、ゼロ形式の恋愛小説ともいうべき表題作「愛」。女教師と教え子のアブノーマルな〈授業〉を即物的に描いた「自習」。故人に関する驚愕の事実が友人によって明かされる「弔辞」。
そのほか「真夜中の客」「競争」など、日常の風景のさなかに悪意を投げ込んで練りあげた文学的オブジェの数々。あまりの過激さに植字工が活字を組むことを拒否したとされる、最もスキャンダラスな作家が放つ、グロテスクかつアンチ・モラルな短篇集。
『青い脂』で飛び出た目玉を拾って入れて、また目ん玉飛び出るがよい!」
岸本佐知子(翻訳家)
――『私が選ぶ国書刊行会の3冊 国書刊行会創業40周年記念小冊子』より
◎装幀=松本久木(松本工房)
*本書は、1999年に小社より刊行した『愛』を、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。
(出版社HPより)
ウラジーミル・ソローキン
Владимир Сорокин
1955年、ロシア生まれ。もともとブックデザイナー・画家だったが、1970年代後半からイリヤ・カバコフらのコンセプチュアリズム芸術に関わるようになる。1985年『行列』をパリで発表し作家デビュー。以後、『短編集』(1992)、『ダッハウの一月』(1992)、『ノルマ』(1994)などを次々に発表。実験的かつ過激な作風で、〈現代文学のモンスター〉の異名を取り、最もスキャンダラスな作家として本国でも注目を浴びる。1994年に『ロマン』を刊行した後も、『マリーナの三十番目の恋』(1995)、『青い脂』(1999)、《氷三部作》(2002~05)、『親衛隊士の日』(2006)、『吹雪』(2010)、『テルリア』(2013)、『マナラガ』(2017)、『ドクトル・ガーリン』(2021)、『女性たち』(2022)など、小説・戯曲・映画シナリオなどを旺盛に発表。2010年『氷』でゴーリキー賞受賞。近年ではウクライナ情勢に関する政治的発言でも、大いに注目を集める。
四六変型判 304頁