other
【国書刊行会 創業50周年記念復刊】
《現代ロシア文学のモンスター》ソローキンの傑作長編が復活!!
〈彼女が目を上げ、二人の目は出会った。「どうか教えて下さい」彼女の視線に胸の内に熱い波がわきたち、思わず身が震えるのを感じながら、ロマンは言った。「教えて……」彼が繰り返すと、彼女はすべてを悟ってまた目を外した。その頬がさっと赤く染まった。「ああ、なんと早く!」ロマンの頭にそんな思いがよぎった……〉
優秀な弁護士としての首都での暮らしにピリオドをうった青年ロマンは、画家として第二の人生を歩むために、故郷の村クルトイ・ヤールへと戻ることにした。旧知の友や親類に囲まれた素晴らしく愉快な日々。都会では忘れていた人間としての生活に、彼は大きな喜びを感じる。そして、やがて彼は運命の女性にめぐり会う……
「現代文学のモンスター」の異名をとる作者が、ツルゲーネフ、チェーホフ、ゴーゴリといった十九世紀ロシア文学の精髄を戯画化しながら描く、衝撃のスプラッター・ノヴェル。
「創造的破壊とはこのことか。
文学界きってのデストロイヤーが小説《ロマン》をぶっ壊し、フィクションの未来を切り拓く衝撃的な大傑作」
――豊崎由美(書評家)
◎装幀=松本久木(松本工房)
Роман, 1994
*本書は、1998年に小社より刊行した『ロマン』Ⅰ・Ⅱを合本し、若干の改訂を行った上で、新装版として刊行したものです。
(出版社HPより)
ウラジーミル・ソローキン
Владимир Сорокин
1955年、ロシア生まれ。もともとブックデザイナー・画家だったが、1970年代後半からイリヤ・カバコフらのコンセプチュアリズム芸術に関わるようになる。1985年『行列』をパリで発表し作家デビュー。以後、『短編集』(1992)、『ダッハウの一月』(1992)、『ノルマ』(1994)などを次々に発表。実験的かつ過激な作風で、〈現代文学のモンスター〉の異名を取り、最もスキャンダラスな作家として本国でも注目を浴びる。1994年に『ロマン』を刊行した後も、『マリーナの三十番目の恋』(1995)、『青い脂』(1999)、《氷三部作》(2002~05)、『親衛隊士の日』(2006)、『吹雪』(2010)、『テルリア』(2013)、『マナラガ』(2017)、『ドクトル・ガーリン』(2021)、『女性たち』(2022)など、小説・戯曲・映画シナリオなどを旺盛に発表。2010年『氷』でゴーリキー賞受賞。近年ではウクライナ情勢に関する政治的発言でも、大いに注目を集める。
四六変型判 808頁