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名づけがたくかけがえのない、このパートナーシップ。実際のカップルだからこそ書(描)ける、喜怒哀楽に満ちた(パラレルな)日常!
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“かつてレズビアンカップルとして見做され、自分たちでもそう思っていた私たちの輪郭はわかりやすい名前を失ってとろりと溶けた。家人は世の中の女性、男性という枠組みのすき間をゆらりゆらりと行き来する。その家人とパートナーシップをむすぶ私がレズビアンと自称するのは実情とやや乖離してしまうだろうか、などと考えたりもする。”
──「第2章 ヤマウチくんはノンバイナリー」
この名づけがたく、かけがえのないパートナーシップについて。ドラマティックなくせに驚くほど心温まって、地に足がついている。そんな私たちの生活と愛について。
【本書の内容】
清水えす子さんと山内尚さんはカップルで、ふたりとも「出生時に女性として割り当てられた者」として生きています。そして、山内さんはノンバイナリーでもあります。
バイナリー(男女二元論)が前提とされるこの社会のなかで、このようなパートナーシップのあり方は、ときに規範からの「逸脱」と見なされ、シスジェンダーの異性愛カップルと比べて「承認」が得られにくいどころか、構造上の不利益や不平等も受けやすい……。この本に登場する〈シミズくんとヤマウチくん〉は、そうした社会状況において生み出された〈非実在カップル〉です。
“家人がかつて祖母に交際相手の人となりを説明するよう求められたとき、非実在文学青年シミズくんが生まれた。この交際相手とは私のことだ。シミズくんは、私について性別を伏せて語ったところの産物である。”
──「プロローグ」
この本は、クィアたちがパートナーの存在を隠すときに立ち上がる〈非実在の恋人たち〉を、想像力で掬い上げようとした結果です。〈非実在〉に思えるかもしれないけれど、〈かれら〉のような存在はたしかにこの社会にあり、そんな〈かれら〉にも個別具体的な生活があり、感情があり、それぞれのやり方で日々を生きのびているのではないでしょうか。
そちらの暮らしはどう?
実際のカップルだからこそ編むことができた、喜怒哀楽に満ちた(パラレルな)日常をえがく、唯一無二のエッセイ集の誕生です。
【登場人物】
ヤマウチくん
漫画家。シミズくんのパートナー。家事においては料理を主に担当している。シミズくんがあまりに熱いものを持つのが下手でしばしばびびる。比較しようがないけれど、自分に比べて皮膚が薄いのかなと思っている。そろそろ新しいフライパンがほしい。
シミズくん
ヤマウチくんのパートナー。もともと食器洗いの担当で、最近食洗機を導入できたのがうれしい。洗濯物も自動で畳めるようにならないかなと思っている。ヤマウチくんが仕事中に水分をちゃんと摂っているとほっとする。普段は精神科医をしている。
山内尚(やまうち・なお)
漫画家。清水えす子のパートナー。
清水えす子(しみず・えすこ)
山内尚のパートナー。普段は精神科医をしている。
(版元サイトより)
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目次
プロローグ
ある日の反転
われら非実在の恋人たち
第1話 シミズくんとヤマウチくん
ぼくらの関係
あらがうためのウェディングドレス
第2話 ヤマウチくんはノンバイナリー
ノンバイナリーであること
ノンバイナリーってなんだっけ
奇妙なふたり
第3話 こんな社会で生きています
家族になりたい
パレードというもの
生活と愛の話
私たちの勇敢なるお茶会
第4話 魂が貴族──あるいは異形たちの生活
異形が二匹
生活の話
貴族、そして妙にストイックなオタク
厄介な双子
けものになろうよ
私の半身Ⅰ
私の半身Ⅱ
飲む石、眠る魅力的な蝙蝠
家人が金髪
さみしいときの話
第5話 ふたりで暮らす
ヒヤシンス先生のこと
亡霊と妖精
食器棚と食器と喪失
いつかの家
ヤマウチくん療養録
詩情に殉じて生きのびる
エピローグ
胡蝶の夢
あのころ魔女になりたかったの
あとがき
おまけ 寝床のとりあつかい
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山内尚〈やまうち・なお〉
漫画家。清水えす子のパートナー。エレガンスイブで連載していた『よるべない花たちよ ~for four sisters~』が上下巻ともに2024年1月に電子単行本で発売。『クイーン舶来雑貨店のおやつ』『魔女の村』も電子単行本で発売中。『われらはすでに共にある──反トランス差別ブックレット』(現代書館)にエッセイを寄稿、装画も担当している。2024年3月、『ノンバイナリースタイルブック』(柏書房)も刊行。
清水えす子〈しみず・えすこ〉
山内尚のパートナー。エッセイ集に同人誌『魂が貴族』『うるわしき怠惰』があるほか、いくつかのweb媒体に別名義「楽しい人生」で寄稿している。普段は精神科医をしている。
四六判 200ページ
柏書房