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カバーも帯もない、剥き出しの、子どもが連れて行ってくれる土の匂いがする景色のような装丁に触れながら読んでいると、長嶋さんの言葉に自分が滲んでいくのを感じる。
歪んだ資本主義社会、止まらぬ環境問題、わたしはどうしたらいいのか。立ち往生する長嶋さんの文章が、わたしにも行ったり来たりと考える時間を与えてくれる。
混沌とした曲線の世界と、秩序だった直線の世界が混じり合う、色と形のずっと手前に、この本は手を引いて連れていってくれる。
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(以下、公式サイトより)
グラフィックデザイナーが母になったら、色と形に辿りつかない日々が始まった。妊娠してお腹が大きくなり、のそのそと歩まねばならぬ体に変化していく中で見えてきたのは、ままならない体と足並みの揃わない社会だった。育児が始まると目の前に立ちはだかる仕事と育児の両立という壁。人々の暮らしと地続きであるはずのデザインの仕事と、目の前の家事育児という暮らしの相性の悪さ。子どもの時間と、仕事の時間。子どもを通して見ている世界と、仕事を通して見えている世界。混沌とした曲線の世界と、秩序だった直線の世界。二つの間で立ち往生しながら見えてきたのは、資本主義のレースと止まらぬ環境破壊とジェンダー不平等が一つの輪をなしている景色。そして子どもが手をひいて連れて行ってくれる、土の匂いがする景色。かつて自分も知っていた、あの曲線の景色。
-目次-
想定外の曲線
四角くて軽くて早い まあるくて重くて遅い
期待される自然な形
産まれたての赤
混乱の白い血
見えない仕事 見えない性
母のグラデーション
変形するひと 変形しないひと
命の結び目
色と形
128mm×188mm / 240ページ
村畑出版