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個人としての一貫性を担保し、他者とのつながりや秩序ある社会を維持するために欠かせない「記憶」。
認知症をもつ人を抱えた高齢化社会、国家や地域社会の衰退による集合的記憶の喪失など、記憶をめぐる社会問題が浮上しつつあるいま、オランダとフランスでオルタナティブな社会実践を試みる、認知症や精神疾患のケアの現場等を本誌編集長が取材。
約90頁にわたる取材旅行の省察と見聞録のほか、ルネサンス期の情報爆発と記憶術を研究する桑木野幸司氏、レバノン内戦の都市の記憶とその傷跡をテーマに音楽作品を制作したベイルートの音楽家・建築史家メイサ・ジャラッド氏へのインタビュー、記憶をめぐるブックガイドを収録。
記憶と認知症を手がかりに、来るべき社会のための態度や今日的な問いについて思索する。
目次
◎記憶をめぐる旅の省察
文=山下正太郎(本誌編集長)
写真=大谷臣史
アムステルダム、ビアリッツ、パリの認知症ケアホーム、在宅ケア企業、美術館収蔵庫、精神疾患ケアセンターを本誌編集長が現地取材。
・ザ・ホーグワイク|認知症居住者が自律協働する「町」
・マフトルド・ヒューバー|ポジティブヘルスという新たな「健康」指標
・エミール|ケアの技法を学生に授けるスタートアップ
・デポ・ボイマンス・ファン・ベーニンゲン|アート・収蔵庫・市民の記憶
・ヴィラージュ・ランデ・アルツハイマー|認知ケアを社会に開くために
・サントル・ド・ジュール・ラダマン|セーヌに浮かぶ開かれたデイケアセンター
◎記憶・知識・位置情報
桑木野幸司・ルネサンス期の「記憶術」が教えること
情報のビッグバンに対峙したルネサンス期の西洋人たちは、 新たな「記憶術」を編み出し、実践していったという。その試みは、 どんな今日的な問いをもたらしてくれるだろう。『記憶術全史』や『ルネサンス 情報革命の時代』の著者・桑木野幸司に尋ねた。
◎記憶をめぐる本棚
記憶が頼りないのならば、記憶をめぐる議論もまた、 手がかりなしには成り立たない。個人と集団をまたぎ、 深遠な哲学とも最先端のテクノロジーともつながる、 そんな、記憶の不思議とともに歩むためのかがり火のようなブックガイド。
◎内戦の記憶・時空を超える音楽
ベイルートの音楽家・建築史家が描く「ホテルの戦い」
2023年3月、ベイルートの音楽レーベルRuptured Recordsから『Marjaa: The Battle Of The Hotels』と題された美しいアルバ ムがリリースされた。つくったのはベイルート出身の音楽家であり建築史家でもあるメイサ・ジャラッド。大学で建築史を学んだ彼女は、 ベイルートで1975年に勃発した内戦の熾烈な戦闘の舞台となった海岸沿いのホテル群について論文を書いた。そして、その論文をもとに、今度は音楽作品をつくりあげた。都市の記憶とその傷痕を、建築という視点から音響を通して辿りなおすという野心的な試みは、いかにして生まれたのか。世界が注目する新鋭音楽家に訊ねた。
【コクヨが考える「自律協働社会」】
コクヨは、個々の価値観と行動が尊重されながら、人と人との関わり合いも大切にされる社会の構築が必要であると考えます。誰もがいきいきと暮らす未来に求められるものは、「自由な個人」と「協調的なつながり」とが共に成り立つ舞台です。一人ひとりの個性が尊重され自由な発想で輝くことができる。他者と互いの価値観を尊重し合い、共に発展していく。人やモノ、環境がフラットにつながることで、社会をよりよくするための協働があちこちで生まれる。コクヨはこのようなワクワクする未来を体現する「自律協働社会」の実現を目指します。
【WORKSIGHT[ワークサイト]】
コクヨが掲げる「自律協働社会」というありたい社会像を手がかりに、これからの社会を考える上で重要な指針となりうるテーマやキーワードを拾いあげ、探究していくメディア「WORKSIGHT[ワークサイト]」。ヨコク研究所と黒鳥社が中心となり構成された編集部が、ニュースレター(毎週火曜日配信)を中心に、書籍、イベントなどコンテンツを展開中!
(公式サイトより)
編集:WORKSIGHT編集部
アートディレクション:藤田裕美
発行:コクヨ
発売:学芸出版社
判型:A5変型/128頁