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韓国社会の〝恨〟を描くゴシックスリラー
物語の舞台は、1950年代後半、朝鮮戦争の傷跡が生々しく残る、朝鮮初の西洋式「大仏ホテル」。朝鮮半島に外国人が押し寄せた時代に仁川に建てられた実在のホテルである。
アメリカ軍の無差別爆撃で家族を亡くしたチ・ヨンヒョンは仁川の港で泊まり客を大仏ホテルに案内する仕事をしていた。雇い主は同い歳のコ・ヨンジュだ。ヨンジュは苦労して英語を習得し、大仏ホテルの後身である中華楼での通訳を経て、再オープンした大仏ホテルの管理を任される一方で、アメリカ行きを虎視眈々と狙う。中華楼の料理人のルェ・イハンは、韓国人からヘイトの対象とされる華僑の一族のひとり。かつて栄華を誇った大仏ホテルも、今や中華楼三階の客室三室とホールだけの営業となった。悪霊に取り憑かれていると噂される大仏ホテルに、ある日、シャーリイ・ジャクスンがチェックイン。エミリー・ブロンテも姿を現し、運命の歯車が回りだす。
伝播する憎しみ、恨み、運命を変えたい人々、叶えたい想い……。スリリングな展開と繊細
な心理描写によって、韓国社会の通奏底音である「恨(ハン)」を描ききり、最後は大きな感動に包まれる、著者の新境地。
【著者略歴】
カン・ファギル Kang Hwa-gil
1986年、全州市生まれ。2012年、短篇小説「部屋」でデビュー。16年に短篇小説集『大丈夫な人』(小山内園子訳、白水社)を刊行、17年に初の長篇『別の人』(小山内園子訳、エトセトラブックス)で第22回ハンギョレ文学賞、20年に短篇小説「飲福」で第11回若い作家賞大賞、21年に短篇小説集『ホワイトホース』で白信愛文学賞を受賞。
【訳者略歴】
小山内園子(おさない・そのこ)
1969年生まれ。東北大学教育学部卒業。NHK報道局ディレクターを経て、延世大学などで韓国語を学ぶ。訳書に、カン・ファギル『大丈夫な人』(白水社)、『別の人』(エトセトラブックス)、キム・ホンビ『多情所感』(白水社)、『女の答えはピッチにある――女子サッカーが私に教えてくれたこと』(白水社)でサッカー本大賞受賞、チョン・ソンテ『遠足』(クオン)、ク・ビョンモ『四隣人の食卓』(書肆侃侃房)、『破果』(岩波書店)など。共訳書に、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』『失われた賃金を求めて』『脱コルセット:到来した想像』(タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』『私たちが記したもの』(筑摩書房)など。
四六判 296ページ
白水社
エクス・リブリス