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「生きていることがただただ心苦しくなる明け方。誰かのために涙を流せますように。」
痛みを抱えて生きる若者たちに寄り添い、どうすれば前を向けるのだろうかと静かにもがく小説。この静かな震えは、深く埋まってしまったよろこびをやがて揺り起こすだろう。(大前粟生・小説家)
「生きていることがただただ心苦しくなる明け方。誰かのために涙を流せますように。」(本文より)
セウォル号沈没事故に胸を痛め、自分にできることを探して奔走していたミレ(未来)が突然、この世を去った。親友だったミレの死に、生きる意欲を失い文章を書けなくなった小説家志望のジヘ。憧れと嫉妬を抱かせた双子の妹・ミレを亡くし、痛みを麻痺させて生きるナレ。叶わぬ恋を胸に秘め、家族の日常を守るために夢を諦めて自傷行為に浸るジャラム。梨泰院圧死事故を機に自らの日常の綻びに気づき、息の仕方がわからなくなるミンソ−−実際に起きた事件を背景に、残され、傷ついた若者たちが互いの傷を見つめはじめる。
「あなたが今どこを歩いているか、私は知っている。不意に滑り落ちて、地面にぶち当たって粉々に砕けてしまいそうで、怯える気持ちを知っている。いっぽうで足下の暗闇はあまりにも深く、地面なんてものは存在しないような気がして、身体の力を抜いてしまえばすべてが安らぎに変わるのではないかという気持ちも知っている。」(本文より)
「この小説が微力ながら引力のようなものになればと願いながら書いた。その切なる思いが、最初の一文から最後の一文を書き終えるまで変わらなかった。」(「作家の言葉」より)
著者について
著者 ムン・ジニョン(文眞鍈)
◉1987年春川(チュンチョン)生まれ。大学在学中の2009年にチャンビ長編小説賞を受賞し作家活動を始める。その後、韓国芸術総合学校劇作科で文芸創作を学ぶ。著書に、デビュー作となる長編『煙草一本の時間』のほか、中編『ディング』、短編集『目の中の冬』『最小限の最善』、掌篇集『日差しのお迎え』などがある。2021年、短編「ふたつの部屋」で金承鈺(キム・スンオク)文学賞大賞を受賞。現在は作家活動のかたわら、ソウルで季節本屋「昼と夜(ナックァバム)」をイラストレーターのパク・ジョンウンと共同で営む。それぞれが選書した本を紹介しながら、読書会やブックトークを企画・開催している。
訳者 キム・ソヨン(金昭延)
◉1979年済州(チェジュ)生まれ。10代から韓国と日本の両方で過ごし、現在はソウル在住。韓国の国民大学校視覚デザイン学科を卒業し、東京藝術大学大学院美術研究科でデザインを専攻。美術博士。グラフィックデザイナーを経て、写真専門出版社で写真集や図録の編集・制作に携わる。韓国文学翻訳院翻訳アカデミーおよび同院翻訳アトリエで学ぶ。韓訳書に菊地信義『装幀の余白から』(花園(ファウォン))。韓国文学ZINE『udtt book club』のメンバーとして活動している。
208ページ 並製本
装画 イワクチコトハ
里山社